幽霊とゲーム女子
暴力、ホラー表現あり。閲覧注意
私は恋人に捨てられて一人暮らしを始めた。
自暴自棄で都内で一番安い事故物件を選択した。
月15,000円のボロアパート。
隣で一家殺人事件があったんだって。
私も殺してくれないかな。
なんて。
別に暮らしていて困ることは特段なかった。
家賃安いし貯金も貯まったし。
私以外の部屋は空室みたいで夜ゲームしてて
「やったー!」とか声出しても、
誰も文句を言わなかった。
やりたい放題できて最高だった。
昼からバイトして、
家に帰ると朝までゲーム
そんな私の1番の生きがいは
深夜1時から5時にかけてやっていた
FPSのゲーム生配信だった。
いつも楽しくライブ配信をしていた。
その日は、いつもと同じように配信するはずだったのに。
配信のコメント欄がおかしかった。
「声がガサガサじゃない?」
「風邪ひいてる?無理しないで」など
心配の声をもらった。
私は風邪など引いていないのに。
私がキルされると、机がバンッて鳴った。
心臓止まるかと思った。
私がキャーッて驚くと、襖がガタガタと揺れた。
間違いなく心霊現象だった。
私が勝つと、床がドンドンって人が跳ねてるような音するし、私がミスすると背中をトントンってされて、まじでビビった。
この幽霊、、、
私と一緒にゲームを楽しんでる?
背中を触られて怖くなった私は、
配信を切ると一目散に布団に潜った。
シーンと静まり返った室内には
私を怖がらせようなどという悪意は
全く感じなかった。
1週間も経つと、私は幽霊に慣れていた。
幽霊は思念体、目には見えないが確かに存在した。しかも、私が少し訓練すると、コントローラーを操作し出し、ゲームをしだした。
私が家の鍵を開ける音がしたら電気もつけてくれた。鍵を閉め忘れるとちゃんと掛けてくれた。
ノートと鉛筆を使って筆談もした。
○とか×とかしか書けないみたいだけど。
肩も揉んでくれた。
もう全く怖くもなく、
むしろ私にとってはその幽霊は既に家族だった。
そんな私の家に元彼がやってきた。
今の彼女と喧嘩をしたらしい。
私は散々この人に傷つけられたのに
まだ好きで、家に上げてしまった。
でも、彼は私の体だけが目当てだった。
部屋に入った途端キスされ、貯まった欲望をむき出しに私の服に手を入れてきた。
私はそれを「嫌だ」と言った。
その瞬間だった。
彼が急に青ざめて腰を抜かして地面に倒れ込んだ。
彼の首元に、赤い3本線のみみず腫れが出来た。
いやだ、、、いや、、しにたくない、、、
彼は、私の目の前で急に憔悴しはじめた。
うぐぅ、、、と泡を吹き意識を失った彼を心配して私が声をかけると、
ハッと急に意識を取り戻し、彼は「ごめん、帰る。ごめん。ほんとごめん。」と言って部屋を飛び出して行ったのだった。
異常に怯えていた。
私は玄関に座り込んだ。
幽霊が私を守ってくれた...?
彼を殺そうとした...?
私のため...?
私も何かしたら殺される...?
私は幽霊の存在に恐怖を覚えた。
カランっと洋室の鉛筆が机から落ちた。
ノートには大きな汚い文字で、
「ありがとう」と書いてあった。
その日から私の部屋に幽霊は出なくなった。
よくわかんないけど、きっと成仏したのかも知れない。
another
それはいつも通りだった。
俺は夜の10時に家に帰ると、キッチンにはラップのされたハンバーグが置いてあった。
付箋には、レンジでチンして食べてね。って。
チンせず、皿とフォークを持って2階の自室に向かった。
ゲームを楽しむ深夜1時。一区切りついて電源を消すと、ガシャっという、どこかのドアを開ける音が聞こえた。
夜中ということもあって不思議だった。
隣のアパートかな?にしては近かったような...。
もしかしたら父さんが出て行ったのかも?
いや、こんな時間に行くこと今までなかった。
...俺、ちゃんと鍵閉めたっけ。
急に怖くなった俺は、ドアの音を立てないようゆっくりと部屋を出て廊下を見渡す。
誰もいない。
安心したのも束の間、1階から「うぐぅ」という、
何か呻き声のような声がした。
1階にはお父さんとお母さんが寝ている....
そして、ドンドンと、何か揉み合っているような音が続いた。
だがそれも1分ほどでまた静まり返った。
静寂に包まれた闇の中から、
ギシッ、、、ギシッ、、、っと
階段を上る音が響いた。
こっちに何者かがくる、、、
2階に向かってきているようだった。
俺は恐怖で心臓の音が破裂しそうで、
息がうまくできなかった。
足音が止まると、
隣の部屋のドアが開く音がした。
妹の部屋だ...
俺はフォークを右手に握りしめて、
自分の部屋を静かに出た。
「パパ...?」
寝ぼけた妹の声が聞こえた。
妹の部屋を覗き込むと、
すらっとした長身の男が刃物を振り上げていた。
そのシルエットが
月明かりに照らされて目に飛び込んだ。
「あ、、、やめ、、」
俺が情けない声を出した瞬間、
妹の身体に三徳包丁の鋭い刃が突き立てられる。
あ、、、、、あ、、、、、
妹を刺し殺した男は、こちらに振り向くと、
ニタっと笑い近付いてきた。
俺は首を締め上げられると、そのまま階段から突き落とされた。そして....