おとぶろぐ

小説とブログを書いてます

boy and witch

 

 

私の両親は魔女狩りで拷問の末、殺された。

 


なんとか生き延びた私は、街の人間たちから忌み嫌われており、ひっそりと森の奥に佇む古い家で生きている。

 


そんな私が山で木の実を拾っていると、顔が青ざめた少年が倒れていた。

毒を持つ果実を口にした様だった。

 


綺麗な装飾が施された服を脱がせて、治癒魔法を施した。

体内に蓄積された毒を分解して、腫瘍と炎症を回復させた。

 


置いて帰るのも心配だったので、自宅に連れ帰りベッドに寝かせた。

すると1時間ほどで少年は目を覚ました。

 


金髪に緑色の瞳を持つ綺麗な顔立ちの少年からは、とても感謝された。

 


学校の自由研究の一環で森の植物を調べていたところ、見たことのない果実を発見して、好奇心から口にしてしまったようだ。

 


とてもいい子だった。

私みたいな魔女が作った食事でも、美味しいと言って食べてくれた。

 


彼は、感謝の証に

「街で一番人気のパン屋さんのクロワッサン」を

プレゼントしたいと言いだした。

 


私は要らないと言ったのだが、

「明日また戻ってくる!」

と言って、街へ降りて行ったのだった。

 


次の日、彼は来なかった。

まぁ子供には私が魔女であることが、理解できていなかったのであろう。

自宅で両親にでも話して怒られでもしたのだろう。

 


私も手当てだけに留めるべきだった。

家にあげるべきでなかったと反省した。

 


すると、ドアをノックする音が響いた。

開けると屈強な男達が立っていた。

 


...魔女狩りだ。

きっと、あの少年は国の兵の息子だったのだ。

 


私はネズミに化けて逃げようとした。

その時、男達の奥の方から

「逃げて!!!」

という昨日の少年の声が聞こえた。

 


「黙ってろ!」

少年を殴る音が聞こえた。

 

 

 

 


私は激怒した。

 


転移魔法で目の前の男たちを上空へ転移させた。

上空1000mから地面に向かって落下してくる男達は無様で無力だった。

 


男たちは全員地面に叩きつけられ弾けて死んだ。

少年は震えていた。

 


「ごめんね。」

私は家を捨てて森に消えた。

 

 

 

残された少年は一人、夜空の月を見上げていた。

彼を殴りつけた男こそ、彼の父親であった。

 


少年の足元の赤く濡れた草木をキラキラと照らす、今宵の満月は唯々とても綺麗だった。